ミツメ「めまい」の歌詞

めまい

めまい

例えばストロークスを初めて聞いた時
「ちょうどこんな音が聞きたかった!」と思ったように
多くの人が潜在的に欲していた音像を最初に提示するような音楽があって
ミツメはまさにそのようなタイプなので
つい音にばかり注意が向いてしまうのだが
今回のシングルの最大の魅力は「歌詞」であると言いたい。

「めまい」は全4曲を通して1つのテーマについて歌われている。
というより1曲ずつはぼんやりと何かを示唆する程度の表現であるため
様々な解釈が可能なのだが、
4曲が並ぶことでストーリーの骨格が浮かび上がる構造になっている。

 > 口に出せば 消えそうなそんな程度の話
 > 胸にしまい込んで忘れる頃まで眠ろう

 > 穏やかな日の 二人はどこに消えたの
 > 触れたらもう 戻れなくなるのをじっと見てる 「めまい」

「めまい」はこのように始まり、最後は別れを示唆する内容で終わる。
簡単に言えば2人の関係が終わるまでの話なのだが、
面白いのは破局までの潜伏期間のようなものにフォーカスが当てられていることで、
3曲目までは自分の猜疑心との葛藤がひたすら描写されている。

その葛藤の描写が秀逸で、
気になるけれど、忘れてしまおうとしたり
疑惑の核心のまわりをふわふわと漂っているような
ただ「じっと見てる」という距離感には、なんとも言えないリアリティがある。

あまり歌詞が語られることのないミツメだが
4曲を通して聞くことで小説を読んだ後のような満足感が得られ、
コンセプトアルバムならぬ、コンセプトシングルの傑作だと思う。